2013年7月19日金曜日

外用抗真菌薬にはなぜ軟膏よりもクリーム剤型が多いか?

市販の水虫薬には、液剤、クリーム、軟膏、エアゾールなどのさまざまな剤型があります。

これらの剤型の使い分け方としては、カサカサした乾燥タイプ(小水疱型水虫)には液剤やエアゾールを、ジクジクした湿潤タイプ(趾間型水虫)にはクリームや軟膏を、ひび割れしたりただれたりしているタイプ(角化型水虫)には軟膏を使用するのが良いとされてきました。
しかし最近ではこれらの薬剤間の特徴の差が少なくなり、基本的には各人の好みで剤型を選べば良いといえそうです。

液剤は、水虫患部が乾燥したタイプの水虫に用いられます。
水虫を殺す成分である抗真菌剤は水に溶けにくく、このため溶剤としてアルコールなどの有機溶剤が使われています。
患部にひび割れやただれ、傷などがある場合には、アルコールが沁みて痛みを感じることがありますので、使わない方が良いでしょう。
特に、趾間水虫では皮膚が弱くて炎症を起こしているケースが多いので、クリーム製剤、軟膏を使うのが好ましいでしょう。
液剤の特徴としては、水虫に対する効力が他の剤型のものよりも強いことが挙げられます。
クリームや軟膏では皮膚を保護する基材成分が入っており、その結果として水虫菌に対する効果が弱められます。

エアゾールは液剤と同じ使い方をしますが、ワンタッチで使える便利さがあります。

クリームや軟膏は、水虫患部が湿潤したタイプに用いられます。
クリームと軟膏の違いは、水虫薬の基剤にあります。

クリームの基剤は、油脂と水とを界面活性剤で混ぜ合わせたものを使っているために、伸びがよくべとつきがありません。

使用感が良く、浸透力が良いので、現在ではクリームが良く使われています。
特に、趾間水虫ではクリーム剤が第一選択薬剤になっています。
趾間では皮膚が弱く、クリーム基材の皮膚保護作用が好ましい効果をもたらします。

軟膏は、油脂製の基剤(ワセリンなど)の中に抗真菌剤を溶解させています。
このため、べとべとした使用感がありますが、ひび割れした水虫患部に適しています。




ちなみに、
「外用抗真菌薬はどれも同じ効果」じゃない!
(日経メディカル 水虫治療 常識のウソより)

考察1 次の外用抗真菌薬のうち、足白癬の治療に最も適切なのはどれでしょうか。
いずれの薬剤も、足白癬に適応があります。
(1)ニゾラールクリーム(一般名ケトコナゾール)
(2)アスタットクリーム(一般名ラノコナゾール)
(3)マイコスポールクリーム(一般名ビホナゾール)

考察2 次に示した外用抗真菌薬のうち、爪白癬に適応を持つのはどれでしょうか。
(1)ルリコン液(一般名ルリコナゾール)
(2)ルリコンクリーム(一般名ルリコナゾール)
(3)ゼフナート外用液(一般名リラナフタート)
(4)ゼフナートクリーム(一般名リラナフタート)

「外用抗真菌薬はどれでも同じ効果」なのか?
 添付文書に適応症として「白癬」とあれば、どの外用抗真菌薬も同様に白癬に効果
があるのでしょうか? 現実には、全ての外用抗真菌薬に足白癬の適応がありますが、
足白癬に対する効果は薬によって異なります。
 適応症とは、治験を行い、ある程度以上の効果があった(その基準や検討方法は
承認された時期によって異なります)ということを意味するに過ぎません。
少なくとも「とても効果がある」ということを保証しているのではないのです。
 実際、1日1回塗布の新しい世代の外用抗真菌薬を比較しても、白癬菌に対する
最小発育阻止濃度(MIC)は1000倍近い開きがあります。白癬菌に対するMICが
小さい(効果が高い)のは、ルリコナゾール(商品名ルリコン)、ラノコナゾール
(商品名アスタットほか)、テルビナフィン(商品名ラミシールほか)、
リラナフタート(商品名ゼフナート)、ブテナフィン(商品名メンタックス、
ボレーほか)、アモロルフィン(商品名ペキロン)です。

白癬菌に効果の高い外用抗真菌薬
(カッコ内は商品名)
・ルリコナゾール(ルリコン)
・ラノコナゾール(アスタットほか)
・テルビナフィン(ラミシールほか)
・リラナフタート(ゼフナート)
・ブテナフィン(メンタックス、ボレーほか)
・アモロルフィン(ペキロン)
 逆に、とても有名なビホナゾール(商品名マイコスポールほか)は、1日1回塗布で
よく、白癬、カンジダ、マラセチア(癜風菌)のどの菌種にも適応があるということ
で、世に出た当時は注目を集めました(それで一躍有名になりました)が、薬効面
ではその後に登場した薬剤に追い抜かされてしまいました。
 ケトコナゾール(ニゾラールほか)も有名な外用抗真菌薬で、白癬、カンジダ症、
癜風などに適応がありますが、白癬に対する効果はかなり低いです。ただし
ケトコナゾールは、カンジダやマラセチアに大しては抜群の効果を発揮します。
 これでお分かりのように、適応があるかどうかは全くあてになりません。添付文書
に同じように記載されていても、効果には大きな差があるのです。ですから、水虫に
使うのであれば、上記の「白癬に効果の高い薬剤」をしっかりと覚えておく必要が
あります。
 というわけで、考察1の正解は、(2)アスタットクリームでした。

「足にはクリーム、爪には液」の塗り分けは必要なのか?
 伝統的に行われている「足にはクリーム、爪には液」という使い分けに意味は
あるのでしょうか? 「爪には液」なのは、液の方が浸透がよい気がするからで
しょう。しかし実際には、「爪には液」にエビデンスはありません。
 また、これもしばしば誤解されていますが、液とクリームはいずれも足白癬や体部
白癬などには適応がありますが、爪白癬には適応がありません。そもそも、外用抗
真菌薬には、どの剤形も爪白癬の適応はありません。爪白癬は、抗真菌薬の内服を
行わなければ治癒は望めません。と考えれば、クリームと液を塗り分ける理由がない
ことがお分かりいただけるでしょう。
 逆に、塗り分けることにはデメリットがあります。まず、処方される薬剤数が
増えますので、特に高齢者では、どれがどの部位用の薬かが分かりにくくなります。
次に、2剤形を塗り分けると、塗る手間が増えます。1つの容器のふたを開けて手に
出して塗って、その容器のキャップをしめて、もう1つの容器を開けて手に出して
塗って、容器をしめる、という作業になるからです。手間がかかると、当然アドヒア
ランスが低下します。水虫の治療では毎日薬を塗布しなければなりませんから、
アドヒアランスの低下は大きな問題です。
 さらに、2剤形を塗り分けると塗り残しができやすくなります。次回以降で解説
しますが、足白癬治療においては、足底、趾間、趾背、足縁、アキレス腱部まで
くまなく塗ることが必要です。塗り残しは、避けなければいけません。
 1剤で、足も爪も外用するようにすれば、薬の数も減らせて処方する医師の手間も
減り、患者の理解も容易になります。そして、1剤形で全体に塗布すれば、塗布時の
患者の手間も減って、塗り残しも減ります。その際の剤形は、クリームでも軟膏でも
液でも、どれでも構いません。しっとりしていた方が良いという人や液が垂れて塗り
にくいという人にはクリーム、刺激を受けやすそうな部位)がある人には軟膏、
べたつきを嫌う人や素足で生活する人には液、といったように選択します。
・剤形数は1つがよい。
・足も爪も同じ剤形で全体に塗布する。
・クリーム、軟膏、液は患者の好みや病変の状態によって決定する。
 ですので、考察2は「どの薬剤も爪白癬に適応はない」が正解でした。

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